コラム
2024/06/02
供養について
供養とは
本来の「供養」
供養とは、三宝(さんぽう=仏教で、最も尊敬すべき三つのもの)とされる「仏・法・僧」に、香や華、燈明、飲食、衣類などの供物を捧げることを指します。
「敬う」という意味の言葉を語源とする、サンスクリット語のpūjā(プージャー)を日本語訳した言葉で、つまり「供養をする」とは「三方に敬意を表す」という意味を持ちます。
僧侶にとっては、供養をすることも大事な修行の一つとされ、敬供養、行供養、利供養など、その対象や方法によって供養の種類も細分化されています。
現在の日本における一般的な「供養」
仏教が日本に伝来すると、日本古来の祖先崇拝の慣習と合わさり、故人の霊を祀って供物などをお供えすることも指すようになりました。現代においては、特に「供養=追善供養」と認識されることが多くなっています。
追善供養とは、生きている人が故人の冥福を祈って善行を積むことを指します。
仏様や故人を想ってお経を読むことや、食べ物を振舞うことが善行とされ、善行によって得た功徳を故人に回向(えこう=たむけること)することによって、故人の成仏や来世での幸せが叶うといわれています。
現在でも多く行われている四十九日法要は、死後四十九日目にあの世で行われる裁判において、故人が地獄行きにならないように「追善(善行を追加)する」という意味を持つ法要です(実際には死後七日ごとに裁判がある為、七日ごとに法要を行います)。
法要では仏さまに飲食や花をお供えし、読経によって功徳を積みます。
また、法事後の会食で参列者へ食べ物を振舞うことも、立派な善行のひとつです。
その後の一周忌や三回忌といった年忌、お盆やお彼岸などに行う法要やお施餓鬼も、善行によって功徳を積むという目的は同じです。
追善以外の供養の役割
故人の冥福の為に善行を積むこと以外にも、供養を行うことで得られるものはあります。仏教の本来の供養の意味とは離れたものもありますが、今を生きる方々にとっても大事な支えとなる点において、これらの役割も決して無視はできません。
①遺族の心の安らぎ
遺族にとっては、供養を行うことが大切な人を失った悲しみや喪失感に折り合いをつけ、苦しみを癒すことにもなります。また、折々で供養を通じて故人との絆を感じることが、自己の存在の肯定や心の平安にも繋がることもあるでしょう。
②感謝の表現
供養は、亡くなった家族や先祖に対する感謝の気持ちを表現する行為でもあります。日々の生活の中での恩恵や導きを感謝し、その思いを供養という形で表します。これは、仏教の「報恩」の教えに基づいています。
③家族の繁栄を祈るため
供養は故人に対する儀式であると同時に、家族全体の安寧や繁栄を祈る場でもあります。お盆や彼岸などに家族が一堂に会して先祖を供養することで、家族の絆を深め幸福を願う大事な機会となります。
社会の多様化や家族形態の変化、コロナ禍をきっかけに、供養や法要に対する皆さんの意識も大きく変わってきており、供養がやや軽んじられつつあるようにも感じます。
供養は亡くなった人の冥福を願う気持ちや感謝を表すと同時に、遺族や家族の心の安らぎをにも繋がるという、多面的な意義を持つ重要なものです。
今一度、供養の大切さに多くの方に気づいていただきたいと思います。
お彼岸法要の様子